- 2008-10-30 (木) 13:49
最優秀賞 「たまたまの 雑談から」
わが家では、朝食にたまごかけごはんが習慣となっております。
二三年前の長男大学受験の朝。
僕、妻、長男、長女、次女の五人が「いただきます」で卵を割ったのですが、長男は小鉢の卵をまぜることなく、ただにこにこと嬉しそうに眺めています。
そして、自分から話しかけることの殆どない彼が、めずらしく「受かりそうだ、きょうは」と言い出したのです。「俺にはつきがある、黄身が二つだ」と、家族の皆に黄身二つのこんもりの小鉢を見せたのです。
もちろん彼以外は、黄身一つです。
黄身が二つ–僕と妻の予定通り・・・・・・。
友達と雑談中に、たまたま「黄身二つ入りの卵をわけてくれる養鶏場がある」を聞いたのが受験三日前。次の日は仕事を休んで探し当て、買い求めて来たものでした。
日頃Lサイズを好む彼にもバレそうに大きな卵でしたが、それよりも何よりも、問題は黄身の数、割ったら一つだったでは効果なし。
夫婦の祈願もかねて、前夜ひそかに、恐る恐る割ってみた二つの卵に、黄身はつやつやと二個ずつ。思わず妻と顔見合わせてにんまり。
長男は、この日受験の第一志望校に合格。受験日の緊張からか、卵のサイズには気づかない様子でした。
この企みの件は、未だ誰にも告白しておりません。
わが家のトップシークレット?として墓まで持って行く覚悟です。
ところが、最近気がかりなことが発生して来たのです。
気がかりは妻です。そして僕の弱さです。
この<黄身二つ作戦>を、長男の長男、つまり孫の来年の高校受験に使いたいと妻が提案して来たのです。
使えば息子にバレます。
だがしかし、使いたい気持ちは困ることに僕にもあります。ないとは言えないのです。
その時はその時ですが「秘密のない人生は眠い」「秘密のない人間は薄っぺらだ」と大げさにポーズするボクの哲学者の部分が、残念がります。
それに「なんだハメられたのか」と少々がっかりする息子の姿が目に浮かびます。
無論、孫を励ましたいとの思いは充分です。
年金受給日には必ず顔を見せるチャッカリ屋を、心底可愛いと思います。
どうすれば、良いのだろうか。
神よ、仏よ、息子よ、孫よ、そして黄身二つの卵よ、ハムレットのボクを救いたまえ!山下修身さん(静岡県)
作者の応募コメント
富士山裾野のあの養鶏場は、まだあるのかな。
黄身二つは孫受験の来年にも手にはいるのかな。
心配です。調べておくつもりです。
受賞に寄せて
女はそれを我慢できない-のタイトル映画がありましたっけ?
わが家の例の秘密を、バカな妻が息子に話してしまい、息子は笑い話に嫁に話したらしく、これを嫁はこともあろうに孫に言ってしまったのです。
先日、孫が「縁起がいいようだからボクも食べて受験するよ」と言いました。–妻や嫁の女どもに比べて孫は男だ、立派だ、心が広い。
今回の受賞もおおっぴらに彼に伝えるつもりです。喜んでくれると思います。
優秀賞 「しあわせの詩」
仁平井麻衣さん(東京都)
作者の応募コメント
たまごかけごはんには思いでがたくさんあります。病気がちだったせいもあって、たまごかけごはんを食べて丈夫になれた気がしています。
受賞に寄せて
忘れられない味
受賞の通知が届いたとき、ルンルン気分になった私は外に飛び出しました。近所を流れる善福寺川は、もう秋の気配でジョギングする人たちも夕日に染まっていました。
走っていると、たまごかけごはんの記憶が温もりといっしょに浮かんできました。私は子供の頃に戻っていました。
優秀賞 「バアチャンと私」
谷口直之さん(東京都)
受賞に寄せて
私が”今日ある“のは祖母のおかげです。広島のとある村はずれの一軒家の一人っ子につきっきりで、「ほら食べ、噛んで食べ、うまいか、そうかそうか!」と卵かけごはんを食べさせてくれた、あのばあちゃんのおかげです。ぜったいにそうです。
優秀賞 「飽きないたまごかけごはん」
尾家徳次朗さん(三重県)
作者の応募コメント
小さい頃から食べているのに、美味しさが変わらないたまごかけごはんは凄いと思います。そんな気持ちを記しました。
受賞に寄せて
結果を期待していなかったので、封筒を開ける時も冷静でした。文面を読み、目を疑り、二、三度読み返し、感激がやってきました。忘れかけていた素直な喜びです。たまごかけごはんを食べるたびに、思い出す記憶でしょう。




